190819 若手社員が退職するときの考え方

 今回は「若手社員の退職するときの考え方」というテーマで話をします。サラリーマンであれば、誰でも1度は退職を考えたことがあるのではないでしょうか。同じような悩みを持っている方に向けて、私の退職経験やサラリーマン経験をもとに退職ついて話をします。

若手社員の退職について

まず若手の退職事例を取り上げます。
10年前も今も同じ表現があります。「新入社員の3割は3年で辞める」
これについて少し考えてみます。 私の結論を言うと、個人の自由です。自分で考えて判断したことであれば、私は個人の意見を尊重します。 新入社員側と会社側の両側の立場で深堀してみます。

若手社員側の立場

なぜ退職するかということを考えると、「期待と違った」という意見が多いのではないでしょうか。
私も若い頃は同じようなことを感じていました。(新入社員の8割が3年以内に退職を検討するといわれています)

ほとんどの人が環境の変化に対して同じように感じるはずです。変化に適応できる人もいれば、そうでない人もいます。 自分がやりたいことが明確になって仕事を選んでいる人は少なく、その時最善と思える選択肢を、なんとなく選んでいる人が多いはずです。

ところが、現実問題として会社は内部に入ってみないとわかりません。
これは日本の採用システムの問題でもありますが、一般企業の場合は入社するまで配属先が決まっていません。期待通りの仕事に配属される人もいれば、そうでない人もいます。入社後すぐにやりたかった仕事にアサインされることは稀で、2~3年経って実力をつけないと、やりたい仕事はまわってきません。

内部状況が分からない状態で下した決断に対して、失敗するリスクは存在します。これはその人が悪いというものではないと思います。相性の問題です。

想像と違う職場環境で、どれだけ耐えるか、どれだけ信念を貫いて自己実現できるか、どれだけ過去の自分の決断に対して責任を全うできるか、について若者は悩んでいます。また、1つの選択肢を採用することで他の選択肢を失います。今の仕事を続けることで、他の可能性をすべて失ってしまいます。他の選択肢を捨てて入社したにもかかわらず、期待と違った現実に対して絶望を覚えるものです。
今の仕事を辞めて新しいことに挑戦するのが良いのか、今の仕事を続けるほうが良いのか、悩ましいものです。

若いうちは、挑戦できます。ところが、短期的に頻繁に仕事を変えることは勧めません。これを繰り返すと本人の立場が弱くなります。
物事を継続できない人と思われて、会社は採用したがりません。


私の提案になりますが、嫌でもしばらく仕事を続けながら、いろいろ試してみることがよいのではないでしょうか。
他の業界について調べたり、その業界に勤める人に話を聞いたりしながら、自分のやりたいことを考えればよいのです。 数年してやりたいことが見つかった時点で、仕事を変えればよいのです。 嫌だからといって、すぐに退職しても次の環境が良いという保証はどこにもありません
上述の通り、会社は内部に入ってみないとわかりません。
しばらく仕事を続けるうちに、いまの仕事の良い面も徐々に見えてくるはずです。

会社側の立場

次に会社側の立場を考えます。
人の採用にはかなりの費用がかかります。広告費や会社説明会、採用面接や入社手続きなどの人事工数もそうですが、入社後の教育費用もそうです。最初のうちは、たいして役に立つ仕事などできません。それでも毎月給料が支払われます。 そう考えると、若手社員が1人前になるのに1000万円くらいの費用はかかります。

苦労して採用した人材にそう簡単に退職されると会社としても困るわけです。
本来の会社の仕事は、市場へ価値を提供することです。ところが、組織が安定しないのであれば、その活動に集中することができません。したがって、可能な限り従業員には定着してもらいたいと考えています。 少なくとも3年くらいは継続してもらいたいと考えます。これが採用初期の考えです。

私個人の考え

私も同僚や部下に退職されて困ったことは何度もありますので、会社側の立場で私個人の考えを記載します。
その人物によって回答を変えていたので、2つのパターンに分けて記載します。

1)一定期間在籍して優秀な結果を残している人材の場合
そのような人材が退職意向を伝えてきた場合、私なら引き留めることなく送り出します。
本人の成長や挑戦を尊重して、新しい生活に舵を切ってもらいます。

2)外に出すには少し心配な社員の場合
本人の判断なので無理に引き留めることはしませんが、忠告をします。
明らかに苦労することが分かっている事柄に対して、その選択肢を選ばせるわけにはいかないからです。


退職自体には否定的ではありませんが、大きな決断をするときは慎重に。同じ失敗を繰り返さないよう事前調査を十分に行いってもらいたいと考えています。

退職の申し出について

誰でも退職を上司に伝えるときは悩むものです。
最近では代行サービスなどもありますが、どうしても会社の対応が悪い場合を除いて、退職手続きくらい自分で対応しましょう。この代行サービスというのも、日本特有のサービスです。外国ではこんなものはありません。 諸外国の場合は、勝手に会社に来なくなるパターンもありますが・・・

どうしても精神的に負荷になる場合は、そういったサービスを利用して第3者に任せることも可能です。 ただ、ポイントとして考えてもらいたいのは、そういった諸問題は転職先でも、今後の人生でも起こります。 一時的には楽になるかもしれませんが、その代わりに耐性や適応力を失うように思えます。

退職を上司に伝えるときの注意点

退職意向を伝えると、基本的には後戻りできません。
本人もかなりの覚悟をもって伝えているはずですので、「上司に説得されて会社にとどまる」などということはないと思います。平凡な社員であればそのまま了承されますが、優秀な人材はなかなか退職させてもらえません。会社として困ることも事実ですが、部下が退職することで上司の評価は下がります。部下のモチベーションを高めて仕事に取り組んでもらうことも管理職の評価の1つだからです。

退職自体悪い行為ではありませんが、相手が納得できるよう退職理由はしっかりと説明できるようにしましょう。
あまりネガティブな理由であれば、上司から論破される可能性もあります。そうではなくて、ポジティブな退職を心がけましょう。喧嘩別れをするのではなく、お互い納得のいく形で済ませましょう。 会社勤めを辞めても、人生は続いていきます。どこかで何かの縁があるかもしれません。

退職決断前に社内異動の可能性を探してみる

会社としてはどうしても失いたくない人材の場合は、他部署やグループ会社への異動も提案されることがあります。
会社ではなく、今の部署や今の仕事内容に不満がある場合は、他部署やグループ会社についての異動も退職前に検討してみてください。 もしかしたら、転職よりいい選択肢が見つかるかもしれません。
社内異動であれば、うまいかなかったと思えば元の部署に戻ることは可能です。退職してしまうと、元の会社に戻るのは簡単ではありません。

退職申請後の慰留について

一度退職の話をすると、会社側は将来に対して備えるようになります。
仮に会社にとどまることになったとしても、周りの人間はその人物の退職可能性を考えます。扱いが悪くなるということではありませんが、 いついなくなっても困らないように準備を始めます。
例えば、新しい人材の採用や、その人物が対応していた案件についての後任候補の検討などです。 心理的にも多少仕事はやりにくくなります。 本人のモチベーションも上がらないでしょうし、周りの人間も少し配慮します。社内で何か満足できていない部分(給料、働き方、同僚、仕事内容など)があるのだろうと、同僚はあなたについて推測します。

退職金について

退職するときには退職金の額がどの程度なのか気になる人は多いと思います。
定年後に高額の退職を受け取って老後を暮らすというのが、従来の日本の考え方です。 会社員のほとんどが退職金に対してこのイメージを持っていると思います。 とはいっても、将来もらえるかどうかもわからない退職金を気にして、何十年も会社に縛られるべきではありません。

私も10年以上勤めた会社を退職した時は、わずかではありましたが支給されました。10年以上勤めても新品の軽自動車が買えるくらいの金額でした。金額提示と合わせて算出根拠も記載がありましたが、これもわかりにくいものでした。一般的な退職金支払い計算の概略になりますが、少し紹介します。

退職金の種類

日本の退職金制度は2種類あります。
確定給付型のものと確定拠出型のものです。 従来多く採用されていたのが給付型のものです。
最近は拠出型を採用する企業の方が多い印象です。

簡単に違いを説明すると、給付型のものは退職時に会社が従業員に支払う費用で、会社側に積み立て責任があります。会計上も退職給付引当金として、将来発生する負債として計上されます。細かい計算式は個別に設定されていますが、かなりわかりにくいものです。役職や勤続年数数に応じてポイント換算で、支給額が決まるようです。

給付型の退職金は終身雇用を前提としているので、数十年という単位で長く務めるほど給付額は増えます。

一方、確定拠出型のものは、会社が退職金を積み立てるのではなく、個人で運用するという考えのものです。 国内・海外の債券や株式などの商品を組み合わせて運用します。 簡単に言えば投資信託のようなものです。 低リスク、低リターンなものや高リスク、高リターンなものを自由に組み合わせることができます。 確定拠出型の場合は、会社側は毎月拠出を行います。 こうすることで、遠い将来の支払い責任はありませんので、経理上も退職引当金は計上されません。

以前勤めていた会社では、途中で制度が変わり、給付型と拠出型の2つの仕組みがありました。 転職後の会社では拠出型のもののみでした。拠出型は会社が変わっても新しい会社で継続することができます。

給付型も拠出型口座に移し替えることができますが、上述のポイントなどはその会社でしか適応できませんので、転職した場合はすべてゼロになります。

2つを比較すると、確定拠出型の方がシンプルで分かりやすく、従業員にとっても会社側にとってもメリットが多いように思えます。

退職金の計算方法

日本の会社は長期勤続を想定に退職金制度を決めています。これは給付型でも拠出型でも同じです。長期で勤めるほど、メリットが大きいという仕組みになっています。会社側が社員のために積み立てた金額が、満額支給されるのは30年以上勤めた場合です。少し事例を紹介します。

例えば、会社が30年勤めた社員のために積み立てた金額が2000万円だったとします。30年勤めれば、2000万円もらえます。
次に、15年勤めた社員のための積立額が、1000万円だったとします。ところが、会社規定により15年勤続の場合は1000万円から50%減額された額になります。この場合の積立額は1000万円でも従業員に支給される額は500万円です。
続いて、3年勤続の社員のために50万円の積立額があったとします。ところが、会社規定により、3年未満の場合は100%減額になるとします。この場合は、この従業員は退職金を受け取れません。
※上記は「自己都合退職」の場合になります。「会社都合」や「疾病」等の理由で退職する場合は別扱いになります。

日本の退職金制度は、このようなしくみになっています。社員を退職させないために一役買っている制度です。結局は会社が都合のいいように決めているしくみです。会社側の事情も分からなくはありません。昨今の経済情勢を考えると、将来の積み立てなどに回せるお金は限られています。とはいえ、客観的に考えても従業員が不利な仕組みに思えます。一部の従業員は、この退職金を目当てに会社にしがみつこうとするのかもしれません。

退職金の心配よりも自分の人生を豊かに

続けることも立派ですが、人の考えは変わります。若い頃やりたいと思っていたことでも10年経てば考えは変わります。自分がやりたいことをしながら過ごす人生の方が豊かになるはずです。何十年先の退職金をあてにするよりも、活力のある若いうちにいろいろなことに挑戦して経験を積む方が、最終的には困らない人生を遅れるのではないかと思います。そもそも会社が倒産してしまっては、退職金など期待できません。そうなったときに費やした何十年という時間は戻ってきません。遠い将来も大切ですが、将来のために今を犠牲にするのではなく、今を充実させて生きた結果が、豊かな将来になるべきです。

世界の途上国諸国と比較すれば、日本という国は民主主義で人権が尊重されていて、経済的に豊かになるための平等の機会が与えられています。本来自由であるはずですが、どうも1つの会社という集団に縛り付けられた中で生活している人が多いように思えます。自由という権利はあって自由な選択肢を持っているのですが、その選択肢を利用することを恐れ、何かに我慢しながら毎日を過ごしている人達です。極端な言い方をすれば、動物園で飼いならされている元気のない動物のような生活を送っています。

そんな人たちにアドバイスです。大きな決断と自分が考えていても、周りから見れば意外とたいしたことはありません。会社に縛られない生き方をしている人も大勢います。


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