190831 就職活動時に知っておきたい採用ハードルと内部事情について

今回は、「就職活動時に知っておきたい採用ハードルと内部事情について」というテーマで話をします。 どこの企業でも外部から来る人間には高いハードルを設定しておきながら、内部の人間の扱いは対照的です。 なぜ採用ハードルと社内人材のレベルが一致しないのか。今回はこのギャップについて解説していきます。

就職活動をしていて、なぜ自分は内定をもらえないのだろう、と悩んでいる人がいるかもしれませんが、気にする必要はありません。過去に採用された人物が全員優秀であるということはありませんし、本人の能力以外の要素が影響しているからです。

1.採用のハードルは高いが、社内人材のレベルは低いという現実

ある外資系会社の採用試験の事例です。
その会社は採用面接時には英語でのプレゼン資料準備と英語スピーチを採用していました。最近は日本企業でもこういった英語のプレゼンを採用試験に導入している会社が増えています。応募する求職者は、外国人の責任者でも出てくるのかと想像しますが、実際はそんなことはありません。※日本語を話せない外国人が出てくる場合もまれにあります。

実際の面接官は日本人の責任者です。彼らの目的は、海外業務の可能性を考慮して採用の基準に英語のスキルを求めているのです。採用試験に英語を課すような会社であれば、内部で働く社員は皆優秀なエリートが働いているはずと一般的には考えがちです。

ところが、入社して内部事情が分かってくると、まったくそんなことはありません。 外資企業であっても英語ができる従業員は少なく、社内に外国人がいるわけでも、海外と頻繁にやり取りがあるわけでもないということです。親会社が外資企業であっても、ただの日本の会社ということはよくあることです。

よく考えると、この皮肉に思える事実も納得できます。もし全社員が英語スキルが高いのであれば、わざわざ外部の人材に英語スキルを求める必要などないからです。外部から来る人間には高いハードルを設定しておきながら、内部の人間の扱いは対照的です。 つまり採用試験のハードルは、その会社の内部事情を反映しているということです。

2.日本の大企業の構造的な問題

内部事情をよく考えると、日本の大企業とは構造的にそんなものです。
終身雇用制度のため、社内のリソースは大勢います。社内の組織変更や配置転換すれば、リソースの有効活用ができるはずです。 本来、わざわざ外部の人間を採用しなくても済むはずです。

よほど忙しくて人手が不足している中小企業などを除いて、大企業であれば人材には困らないはずです。そんなふうに考えると、大企業が人材を募集する理由は、社内の人間の士気が低い、新しいことを学ぶ意欲がない、即戦力がいない、優秀な人材がいないなどのネガティブな内容に思えます。

また、上述した採用ハードルの高さも従業員を社内に引き止める役割を果たしています。優秀な人材は他社へ転職することができますが、そうでない人はそう簡単に転職という選択肢をとれません。したがって、会社によっては優秀な人だけが抜けていき、居残るのは平凡な人材ということもあります。この結果、採用試験という狭き門を通り抜けて入社した人材であっても、「社内に優秀な人はそれほど多くなかった」という現実に気が付きます。

3.なぜ採用ハードルと社内人材のレベルが一致しないのか

これは経営者の立場から見ると、納得できます。
日本は終身雇用制度のため、いったん採用すると従業員を解雇できません。会社側にしても採用する人間が適当かどうかの判断は難しいものです。採用時に判断を間違い、その従業員を定年まで面倒を見ないといけないとなると、 採用のハードルを上げて失敗するリスクを下げようとするのが会社側の狙いです。

また、入社時点での景気動向にも左右されます。例えば、日本の家電メーカは20年前であれば事業も拡大していたので、それに伴い採用ができていました。組織拡大が目的になるので、この当時は採用ハードルは高くありません。一方で、不況時の採用は即戦力や高い専門性が求められます。入社時期によって採用されやすさが違うのです。

社内の大量リストラを実施しながら、外部からの新規採用を増やすという行為は一見矛盾しているように見えます。社内で役に立っていない人材に退職してもらい、外部から優秀な人材を獲得しようとしているのです。
転職して、新しい職場で生産性の低い仕事を見かけるかもしれませんが、こういう背景のためです。

4.採用面接の事例紹介と心構え

それでも面接とは緊張するものです。
特に新卒採用の就職活動は社内の事情も分からないので、立場も弱く完全に評価される側になります。一方で転職するときは業界の動向もわかっているので、新卒採用試験に比べて心の余裕ができます。 転職しなくて今の会社に残っても良いという選択肢もあるうえに、本人の実績やスキルについても明確になっているためです。


私個人の事例を紹介すると、
受けた会社によっては、会社紹介や活動内容・仕事内容を説明してくれる会社もありました。 中には名前も名乗らずにいきなり面接・質問してくる会社もありました。 仮に、1次面接に合格しても印象の悪い会社はありました。 自己紹介もしないような一般常識を持っていない人間が採用面接に出てくるよう会社に就職したいとは思いませんでした。

一方で、現場を見学させてくれて従業員の働いている様子を紹介してくれる会社もありました。 採用面接に行ったときに、すれ違った従業員が挨拶してくれた会社もありました。 小さなことですが、これだけでもその会社の印象は大きく変わります。
相手企業が応募者を評価しているように、私も相手企業を評価していました。 仮に内定が出ても、私がそれを採用するかどうかはまた別の話でした。 どこでもいいから行くという考えはありませんでした。


転職活動は入社前に相手の会社を知る最後の機会です。転職活動を利用して本当に自分にとって良い環境なのかどうか、よく状況を見て判断してください。内定が出るということは、今回転職しなくてもいつでも転職できるということです。 いつでも転職できると思えば、考え方に余裕が生まれます。

5.新卒者がとるべき就職活動での心構え

最後に、新卒者の場合についてアドバイスします。
現代の若者は、現状の雇用システムの面では不利な立場にいます。大勢の年配社員がいる企業は社内の人材整理をしない限り新規採用することなどできないからです。日本の経済成長も停滞していることから、全体的に見れば明るい未来はありません。

それでも、先述したように専門性を高めてスキルを磨けば会社に入る道などいくらでもあります。入社しないと専門性が磨けないと思うかもしれませんが、中小企業でも専門性を磨ける職場はあります。個人で勉強して専門性を高めている人もいます。そもそも専門性を持ってしまえば、会社に雇用される必要すらなくなります。
また、仮に採用されて就職できたとしても、上述したような内部事情に失望する場合もあります。



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