210407 日本の自動車産業の将来予想

今回は「日本の自動車産業の将来予想」というテーマで話をします。

日本の自動車産業の現状

トヨタ社長の発言を聞いていて少し残念な思いがしました。
https://toyotatimes.jp/insidetoyota/130.html

というのも、電気自動車の話を取り上げて日本の電力事情の話をされました。 日本の電力が化石燃料に依存しているので、日本では EV を普及できないというのが彼の主張です。確かに事実ですが、EV 技術で優位性を持っていない、あるいは燃料電池やハイブリッド方式で優位に立とうとしているトヨタの狙いが見えたコメントでした。

自社の強みを生かそうとしているので、EVを否定するための言い訳を探しているように思えます。本気で環境問題に取り組もうとするのであれば、自社の産業を超えた枠組みを作ろうとするのが本来の在り方ではないでしょうか。全体的に「トヨタは環境問題よりも既存産業維持を優先しているんだな」という残念な印象を持ちました。既存産業や雇用を優先したおかげで結果的に、自動車産業が衰退して日本の自動車産業が衰退していくようにも思えます。

海外企業によるEV事例の紹介

世の中には、電力事情を解決しようとする自動車メーカーも存在します。
例えばテスラのイーロンマスク氏は電気自動車の販売促進だけでなくて、ソーラーシティという会社も運営しています。この会社は太陽電池で電力を作っています。この2つの会社を持っている彼の狙いは、EV の電力源を太陽電池で賄うためです。

もう一つ別の会社の事例があります。この会社は自動車を軽量化して直接太陽電池を動力源に取り込んで稼働させています。太陽光を直接利用することで充電不要のEVで、最長航続距離は最長1600kmとのことです。
https://www.businessinsider.jp/post-225967

いままで自動車を作っていなかった会社もEVに参入しています。小型で100万円程度で販売するようです。中国では50万円程度の一人乗りの小型EVが爆発的に売れています。生活が豊かになって車を所有するようになると、一人で移動する人の割合が増えます。日本でも一人で移動している利用者は多く、一人乗りの安いEVに対してのマーケットは大きいとみています。
日経新聞参考記事)出光、100万円台の小型EVに参入



こういうソリューションを提案する会社経営者が世の中にいる一方で、トヨタ社長による日本の電力事情を説明したコメントに少し失望しました。「できない理由を説明する」のではなく、「どうやったらできるかの提案」を期待したいと思います。 政府による規制が産業の足を引っ張っている側面があることは事実です。何かイノベーションを起こそうとしても、訳の分からない古い規制が未だに存在していて、普及しにくい部分もあります。

だからこそトヨタ社長に期待したいのは、海外で EV 販売を促進してもらい、「日本のインフラがどれだけ遅れているか」ということをアピールしてもらいたい。そういうプレッシャーを日本政府にかけて、日本でも電力事情が改善したり、電気自動車のインフラの構築が進むように動いてもらいたいと思います。


世界時価総額ランキング50位内に存在する唯一の日本企業がトヨタです。私は日本企業に世界でもっと活躍してもらいたいと考えています。保守的になると、日本の家電メーカーが直面したような衰退が、日本の自動車業界でも起こるような気がしているのです。

日経新聞参考記事)脱ガソリン車、世界で加速

日本以外の世界はEVにシフトしています。米カリフォルニア州のZEV規制(排ガス規制)はすでに適応されています。これにより、自動車会社間でCarbon Creditといって炭素排出量の取引が開始されていて、EVしか生産しないテスラでは他の自動車会社に排出枠を販売しています。

イギリス、中国、フランスなどでも2035~40年をめどにガソリン車の販売を禁止する方向です。(日本でも先日宣言が出て、2030年なかばをターゲット)

日本の自動車産業の将来予想

4/3号の週刊ダイヤモンドで日本電産社長の関さんのインタビュー記事があります。報道によると、日本でEVが進まない理由は下記3点です。
1. 政府による環境政策の欠如
2. 再生エネの電力供給不足
3. 各自動車会社の改革意欲

1.2は各自動車会社の対応ではどうしようもない話ですが、3については各社の経営陣の考え方次第です。日本の自動車産業の古い体質が、結果的に国内の産業自体を縮小させてしまうように思えます。

テスラ社が高級セダンからEV車を投入してきて、現在は大衆車のモデル3のEVシェア拡大を目指します。一方で中国の五菱社が宏光MINIという格安EVで、低価格領域でシェア拡大を進めています。いずれも最終的には大衆車層のマーケットを徐々にEV化していくはずです。日本の自動車産業は気付いた時には、「自分たちが勝負できるマーケットが非常に小さくなっていた」という状況に陥っている気がします。

※関連書籍)イノベーションのジレンマ
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